萩原珈琲
1928年(昭和3年)、モダンな文化が花開く神戸で創業。創業者・萩原三代治が「薪で焼くパンのように、コーヒーも炭火で焼けばもっと美味しくなるはず」という着想から確立した「炭火焙煎」の味を、三代にわたり守り続けています。
「本当においしいコーヒーを」という信念は、時代が移ろい、効率化が求められる現代において、より一層深く、揺るぎないものとなっています。
炭火焙煎こそが萩原珈琲
萩原珈琲の代名詞である「炭火焙煎」は、ガス式に比べ手間も時間もかかります。豆の状態を見極める職人の目と耳、そして良質な炭が不可欠です。
1960年代の高度成長期、多くの焙煎業者が効率的な大型ガス窯へ移行するなか、萩原珈琲はあえて困難な道を選び、独自のコクとまろやかさを追求しました。それは、かつて「茜屋珈琲店」の店主が惚れ込み、世界一と称した、妥協のない味の追求でもあります。
伝統の継承と、新たな価値の創出
かつて、たたら製鉄を支えた鳥取県日南町の黒炭づくりは、時代の変化と共に衰退の危機にありました。しかし、現在は「伝統を絶やさない」という強い意志のもと、その技術が守り継がれています。また、和歌山県有田川町のマルカ林業様のように、本来捨てられるはずの雑木に「もうひと活躍してほしい」という想いを込め、炭として蘇らせる新たな挑戦も始まっています。
私たちの炭の消費は、単なる燃料の調達ではありません。それは、一度途絶えかけた地域の伝統を復興させ、森林保全で生じる雑木の「出口」となることで、次世代へ繋がる持続可能な産業を再構築するという大切な役割を担っています。
震災を乗り越え、結ばれる絆
1995年の阪神淡路大震災では、最新鋭だった工場が被災。大きな困難に直面しましたが、同業他社との協力や、職人たちの不屈の精神でその味を繋ぎ止めました。2007年には現在の新工場を再建。震災の教訓を胸に、今日も神戸の街から香り高い一杯を届けています。
また、焙煎に欠かせない炭の調達においても、かつてたたら製鉄で栄えた鳥取県日南町の黒炭再生産を支援するなど、国内の森林保全と伝統産業の維持に貢献する「国産炭100%」の循環型焙煎に取り組んでいます。
「積極的退化」が拓く未来
現在、萩原珈琲では「積極的退化プロジェクト」を掲げています。
あえてフルオートの大型機械を廃止し、人の手が必要なアナログな工程へと戻す試みです。一見、時代に逆行する非効率な選択ですが、それによって在庫は「目」で管理できるようになり、重労働が解消され、高齢者や障がいを持つ方も含めた多様な雇用が生まれました。
「効率」よりも「人」を。
萩原珈琲は、これまでも、これからも、一杯のコーヒーを通じて人と社会に寄り添い続けます。