伝統産業の新たなる出発　播州刃物のキッチン鋏「シェフ・キッチン」

播州地域と呼ばれる兵庫県小野市一帯は、２５０年以上も前から家庭刃物の生産を伝統産業としています。家庭刃物とは剃刀や鋏、包丁などの家庭で使う身近な刃物のことです。
播州地域で生産されている家庭刃物は様々ありますが、なかでも特出しているのは多彩な鋏類です。握鋏を筆頭に、裁鋏から園芸用の鋏類まで、こだわりぬかれた鋏が数多く生産されています。今回はそんな数ある鋏のなかから、キッチン鋏の「シェフ・キッチン」をご紹介します。熟練の職人さんが一点一点手作業で仕上げる高品質なキッチン鋏「シェフ・キッチン」。平成２１年には、小野市新殖産品の最優秀認定品を受賞しており小野市が誇るキッチン鋏です。

新たな出発　播州刃物とは

播州刃物とは、小野金物卸商業協同組合の依頼を受けた、デザイン会社シーラカンス食堂が立ち上げた新しい地域ブランドです。たしかな技術でつくられる播州地域の家庭刃物を今一度、世の中に届けるべく、播州地域を代表する各分野の刃物職人で構成されています。また、伝統産業を継業させていくための活動も行っています。

シェフ・キッチンを手にした感触

シェフ・キッチンからは無骨な力強さを感じます。
大量生産された鋏からは感じる事のできないずっしりとした重み、開閉したときの刃の擦れる感触や、カチンと鳴る金属の小気味いい音。ひとつひとつの動作から、播州刃物の歴史ある鋳造技術を感じ取ることがきます。

切れ味抜群　片刃の魅力

こんなキチンバサミ見たことない！
とても特徴的な刃をもつ、シェフ・キッチン。通常、鋏と言えば上下２枚の刃を使って挟み切ります。しかしシェフ・キッチンが持つのは片刃のみ。鋭利に刃付された刃と、まな板の役目を果たす、刃の無い受刃で出来ているのです。このデザインは、食材をしっかり挟み込んで滑りにくくします。そのため、様々な食材のカットもお手の物。食材を潰すことなく切ることができるので、美しい断面に仕上がります。注意点は、握る向きがあるということ。かならず受刃が下に来るように握って使います。
逆向きで握っても問題なく切れますが、正しい使い方で本領を発揮してもらいましょう。

あれもこれも　シェフ・キッチンで

シェフ・キッチンの刃は、とても鋭利に作られているため、硬いものから柔らかいものまで切ることができます。
硬い食材は包丁では不向き。切ろうとすると、滑ってしまったり、包丁の刃を傷めてしまったり。手元がくるってケガをしてしまうことあります。しかし、シェフ・キッチンがあれば、受刃がしっかりと食材を押さえ、滑ることなく切ることができるので、冷凍肉や蟹の殻だっておまかせあれ。
塊肉も綺麗にカットできるので、まな板を用意せずにお肉の下拵えを済ませることできます。「野菜と肉類は一緒のまな板を使いたくない。でもちょっと切るだけだから、肉用のまな板を用意するのも面倒。」そんな時こそ、シェフ・キッチンの出番です。

※塩豚をカットする様子。バラの塊肉は包丁できるとすぐに油がまとわりついてしまう上に、柔らかいので、キッチン鋏でカットするのがオススメです。

洗い物は鋏だけ！ひとつの工程が減るだけで、お料理ってずいぶん気持ちに余裕ができますよね。

そして、更に驚きなのが柔らかい食材にも、大活躍というところ。

柔らかい食材が良く切れるということではなく、柔らかい食材を潰すことなく、美しく切れるということ。ここがとても魅力的なポイント。張りのあるプチトマトも中身が飛び出すことなく、すっとカットできます。

※洗って水を切ったらそのままシェフ・キッチンでカットして。オーブン板に並べたら、低温でじっくり加熱してドライトマトの完成です。

使い道いろいろ

鋏を閉じれば、栓抜きとしても使うことが出来ます。

持ち手に一番近い輪は、クルミなど硬いものを挟んで割るのに最適。
銀杏の殻を割るのにも使えそうです。
持ち手の突起部分は、プルトップ缶を開封する際に、差し込んで使っても良いでしょう。

お手入れ方法のご紹介

使った後は、すぐに汚れを拭き取るようにしましょう。食材の切りかすが鋏の合わせに入ってしまうと、取り除きにくくなってしまいます。そして食器洗い洗剤を使ってよく洗ったあとは、しっかりと水分を拭き取っておきます。
マイナスネジ部分に食用油を数滴落としておくと、開閉の具合を保ちやすくなります。

鋏もメンテナンスできる

鋏も、包丁と同じように研いでメンテナンスをすることで、長く使い続けることができます。
播州刃物では、それぞれの製品をどの職人さんが製造したものかがきちんと管理されているため、製造した職人さん自らが研ぎなおしをしてくれます。つまり最高の状態でメンテナンスをしてくれるということ。研ぎなおし以外にも修理も引き受けてくれるので、鋏を使い捨てすることなく、長く愛用し続けることができます。
しかも、播州刃物の製品でなくても研ぎなおしや修理を引き受けてくださります。
刃物に対する心意気を感じる、とても嬉しいサービスですね。

キッチン鋏の贈り物

刃物を贈ることは、「縁を切る」などと言われ、避けられることがあります。
しかし、刃物の贈り物にはもう一つの解釈があるのです。
それは「未来を切り開く」という意味です。
親しい人の新たな門出に、ポジティブな想いを込めて、鋏を贈ってみてはいかがでしょうか。
シェフ・キッチンは、世界的な評価も高い“播州織”につつまれて桐の箱に納められています。
熟練の職人さんがつくる、素晴らしい鋏と織物。兵庫県の伝統工芸品を、ぜひ贈り物に。
喜ばれること間違いありません。

伝統を守り　継業していく未来

小野金物卸商業協同組合とデザイン会社シーラカンス食堂によって立ち上げられた、「播州刃物」というブランド。
２５０年以上も前から播州地方でつくられてきた鋏の数々は今、海外で高く評価されています。
昔からずっと変わらぬデザインであるのにも関わらず、その品質や職人の技術が注目され、改めてその魅力を知る人が増えてきているのです。
なぜ、日本の銘品の魅力が海外から発信されるのか。もっともっと価値を見直して私たちが知らなければならない日本の伝統技術や工芸品があるのだと、播州刃物の取り組みを通じて知りました。
２５０年受け継がれてきた職人技術の継承と、伝統産業の継業。手に取るとわかる丁寧な職人技。使い続けて感じる高い品質。播州刃物が伝えてくれる、伝統産業のこれまでとこれからを知ることで、物選びの基準と背景が、少し変わるかもしれません。
兵庫県小野市、播州地域で生まれる、キッチン鋏「シェフ・キッチン」を手に取って、その歴史の深さと未来に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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