江戸箒とは
江戸箒は、イネ科の「ホウキモロコシ」という草を編み上げた和箒です。江戸時代初期、家の中で使う箒としては、毛先が柔らかくしなやかな棕櫚箒(しゅろほうき)が広く普及していました。毛先が柔らかい棕櫚箒は、日本の家屋に多かった板の間の掃除に適していたためです。その後、江戸庶民が暮らす長屋に畳が普及していくにつれて、白木屋傳兵衛が畳の掃除に適した箒を作るようになります。この箒は、主に関西で作られていた棕櫚箒に対し、江戸前の箒という意味で「江戸箒」と呼ばれるようになりました。職人たちによって、その技術は現在まで大切に受け継がれています。
江戸箒の原材料
白木屋傳兵衛の江戸箒に採用している原料草は、国産草(つくば・三浦・東根産)と輸入草(インドネシア産)の2種類です。元々は、長年にわたり茨城県つくば市産の原料草を使用していましたが、ホウキモロコシ栽培農家の減少により徐々に国産草栽培の維持が困難になってきました。現在は白木屋傳兵衛が会社をあげて、神奈川県三浦市、山形県東根市、またインドネシアにおいて、指導や交流を行いながらホウキモロコシ栽培の技術継承に努めています。このように厳選した土地でホウキモロコシの栽培を行いながら、収穫した一本一本の草を熟練した職人が細かく分類し、一定の水準以上と認められた草のみを江戸箒作りに利用しているため、常に高い品質を保ち続けることができるのです。
江戸箒の魅力
白木屋傳兵衛の江戸箒の魅力は、手に持ったときの軽さ、コシがしっかりあること、そしてシンプルな装飾です。
① 手に持ったときの軽さ
江戸箒の一番の魅力は、手に持って扱いやすい軽さ。実際の重量が軽いだけでなく、柄竹と穂先のバランスを考え、一番軽く感じさせる編み上げを採用しているので、女性でも簡単に使いこなすことができます。
② コシがしっかりある
軽くても穂先にコシがしっかりあるのも大きな特徴です。これは、収穫したホウキモロコシの草一本一本について職人が丁寧に選別作業を行い、厳選した草のみで江戸箒を作っているためです。コシがある江戸箒で掃き掃除をすると、手首の負担が軽いので疲れづらく、型崩れも起きづらくなります。
③ シンプルな装飾
江戸箒は、「江戸っ子」の合理的なニーズに応えることを第一に作られ、装飾に時間をかけず、箒の機能性や耐久性を重視してきたルーツがあります。このため、現在の江戸箒も、あえてシンプルな装飾にとどめることで機能性や実用性を高め、インテリアとも調和しやすくなっています。
江戸箒のメンテナンス
使う場所や使い方、頻度によりますが、江戸箒はおおむね4~5年ほどで穂先に薙刀状の掃きグセがついてくることがあります。その場合は、霧吹きなどで穂先に水分をたっぷりと補給し、草の繊維に十分水分が行き渡らせてください。そして手や紐で力を加えてクセを整えると、大体の掃きグセを直すことができます。また、穂先が摩耗することによりやせ細り、掃き心地に物足りなさを感じたときは、一般的なハサミで穂先を切りそろえます。クセを整えて、また穂先がやせてきたら切りそろえることを繰り返しながら使用するようにしてください。
江戸箒の使用年数
やせた穂先を切りそろえてまた使うということを繰り返していると、7~8年ほどで穂先の長さはおおむね3分の2から半分ほどまで短くなります。この状態になると、玄関や外掃きにも使いやすいサイズとなります。このように、穂先を切りそろえるメンテナンスを行いながら使い込むことで、おおむね10年は箒としての役目を果たすことができるでしょう。江戸箒は自然素材でできているので、限界まで使い切った後、BBQの燃焼材などで燃やすことも可能です。